チームの発想

2002年から2003年にかけて、スタンフォード大、Learning Design Technology Programで修士号を取った後に、その時の体験を振り返りながら近況報告をかけて、学んだこと感じたことを共有するためにブログをはじめました。6年間休んだ後、再開です。:)

Saturday, May 14, 2005

LDT プログラムではどんなスキルが得られるのか

昨日のLDT EXPO 2005のことを書きたいと思うのですが、その前に、Master's project、LDTを1年間で終えるとどんなスキルを習得出来るのかについて少し説明します。

Learning Designerの仕事は、
ある学習者のグループに対して、
- 彼らはある「Learning goal - 学びのゴール」を達成しなければならない
- それを達成するために、どのようにファシリテートするのか
ということです。

クライアントのニーズに対し、コンサルティングを行うと言ってもよいと思います。これをプロセスに分解すると以下のようになります。
1. クライアントのニーズ(達成したい行動目標、学びのゴール)を聞く
2. 学びの場を観察する
3. 現状と学びのゴールのギャップは何か?を理解する
4. どのように現状からゴールへの橋渡しをするのか?つまりどのようにデザインするのか?を考える
5. そこにどのようにテクノロジを使えるのか?も考える
6. 学びが起こったのかを評価する

Master's projectの中では実際のデザインに移る前に「人はいかに学ぶのか」を理解するために教育学の研究論文をかなり読みこむことを要求されます。例えば、語彙の習得のための製品をデザインをするのであれば、人がいかに語彙を習得するのか、その基礎研究を理解した上で、その学びをデザインするプロセスへ移るべきです。

これは重要なプロセスなのですが、アカデミアの方はここのtheoreticalなプロセス、研究そのものに時間を割きすぎる。また論文自体が難しいですから、世の中の方に届き難い、研究結果が実践で利用され難い。逆に教育実践の場やビジネスの世界では、リソースに限りがあったり、利益を出す必要もあります。スピードや利益を優先して製品開発やマーケティングに精を出した結果、ビジネスとしては成功するのだけれど、本当に学びは起こっているの?と疑問視したくなるものが出来てしまうことがあるのではないか?と私は思っています。

けれども、理論をデザインに活かすと言うのは実際に可能で、その訓練をまさにMaster's projectで行うのです。バランスよく、超高速で行うスキルがあれば、実践の場でもreasonableなコストでこれを行うことは可能です。

Learning Designerの役割は、アカデミアの研究を実践に利用する、その橋渡し、ファシリテータ、インタプリタとなること。だから、アカデミアの人達の言葉も理解しなければいけないし、実践される方ともコミュニケーション出来なければいけないし、学びの場を見た時にそこで何が起こっているのかを観察する眼も必要。

さらに、即興でプロトタイプを作るとか、ストーリーボードをぱぱっと作って見せられる事。クリエイティビティも大切。その訓練やアイデアを私はいくつも得ましたし、現在も収集しています。
そのひとつとして、technological sketching skillと私達は呼びますが、即興でプロトタイプを作ってコンピュータ上で見せられるスキルも身に付けています。

そして、最後にLDT EXPOで、プレゼンテーションを教授陣の前で行い評価を受け、ポスターを作って展示会のようなものを行います。ここが、Master's projectの大きなmilestone。サンフランシスコベイエリアの、教育ビジネスに携わる会社やAlumni、他の学部の教授も訪れるので、就職活動の場になることも。

LDT EXPOを終えると学生達は、 3週間程でMaster's project自体を論文にまとめ、インターネット上にWeb Portfolioを作り、卒業式を迎えます。46unitを1年で終えること、インターンも必須ということで、他の学科のmasterに比べて、かなりintensiveなプログラムではあります。興味がある方はぜひapplyしてみて下さい。:)

メモ:
今回の内容には、先日、友人が教える私立大の「コンピュータと学習支援」という講義での話が含まれています。その時のことについてはまたいつか書きます。

語彙の習得というテーマは私のMaster's projectで設定した「学びのゴール」でしたが、そのきっかけは
Boys don't read as much as girls do.
というリサーチでした。これについても必ずいつか書きます。

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